2007/08/14

超・格差社会 アメリカの真実

2001年には、全世帯のトップ1%が、全米の富の33.4%を保有し、次の4%が25.8%、要するにトップ5%が60%の富を握り、次の15%が25.2%、合わせてトップ20%が84.4%の富を握っている。


同じ数字を時系列で見ると、約20年前の1983年には、トップ20%の持ち分は全体の81.3%だったから、3.1%増加したことになる。この3.1%は、2番目の20%から1.3%(12.6%から11.3%)、3番目の20%から1.3%(5.2%から3.9%)、そしてボトム40%から0.6%(0.9%から0.3%)ずつを吸い上げたものだ。

そして20年間に一番シェアを増やしたのが、トップ2~5%、資産価値でいうと100万ドル強から500万ドルのアッパーミドルで、株価や不動産価値が上昇した恩恵を享受した。第一章で解説した「プロフェッショナル層」たちである。

次に金融資産だけに限ってみると、上位集中は一層顕著になる。トップ1%がほぼ4割を押さえ、上位5%で3分の2を押さえているから、残り95%の世帯持ち分はさらに小さくなる。これは大半の世帯の主要資産が、持ち家であることを反映している。だから上位20%の金融資産シェアは91.3%に達し、次の20%の持ち分7.8%を足すと99.1%
になる。つまり全世帯の上位40%がほぼ全ての金融資産を持っているわけで、残る60%には金融純資産は全くなく、あるのは借金のみということになる。

さらに金融資産の中から、年金や生命保険などの収入予備的な資産を除き、
投資としての金融証券に限定してみると、トップ1%のシェアは58.6%、次の9%のシェアが30.6%で。トップ10%
の持ち分は実に88.6%に達する。

つまりウォール街は、人口のトップ1%をハッピーにしておけば、全米の金融資産の6割を押さえることができ、10%をハッピーにすれば、9割を押さえることができる。

こうした富の集中は、アメリカの税政策や金融政策に深長な意味を持っている。
なぜなら、民主国家の政策を決めるのは選挙に当選した大統領や議員であり、選挙で勝つための最大の武器は選挙資金だからだ。

大統領選挙では4年ごとに10億ドル近い選挙資金が集められる。
1000億円を集めるためには、小口の資金を集めてもどうにもならない。1億円単位の寄付を、1000近く集めなければならないわけだから、候補者の目がどこに向くのかは言うまでもない。

(『超・格差社会 アメリカの真実』 小林由美 日経BP社)

2007/08/12

上は金持ちの家に生まれたから金持ちなのだ

アメリカは広大な国だし中央集権の度合いが低いから、地域ごとにカルチャーは大きく異なり、異なるカルチャーが共存している。
生活水準も地域ごとに大きく違う。それでもエスタブリッシュメントが集積している地域ほど、高級な商店街があるだけでなく、
富裕層のさまざまな雑用を引き受ける低賃金労働者が集まってきてあからさまな格差を見せつけている。こんな状況がどこでも共通して見られる。


そして-これがいかにもアメリカらしいのだが-どの階層に属している人も、自分よりも下は無能か怠け者だから貧しく、
上は金持ちの家に生まれたから金持ちなのだ、と思っている。


(『超・格差社会 アメリカの真実』 小林由美 日経BP社)